ワークショップ(2018年11月23日)ご報告

 先日(11/23)日本哲学史専修は「日本哲学研究のオルタナティブ」を開催いたしました。ここに特定質問者2名による短い大会報告を記します。

 

私は教育学研究科で教育社会学を専攻しています。哲学については門外漢ですので、どのような質問をさせて頂くのがよいかと最初は少し悩んだものでしたが、

教育学と教育社会学、そして哲学の関係など、面白い議論がどんどん出てきたため、私も楽しんで(そして無責任に?)コメントさせて頂くことができました。他にもたとえば教養主義と哲学の関係など、現代の哲学のあり方を考える上で教育社会学の観点から取り組むことのできる問題は少なくなく、興味深いテーマが色々と考えられると思います。上原麻有子先生と登壇者の皆さま、とくにご招待頂いた石井さんに感謝いたします。(藤村達也)

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私は文学研究科で日本哲学、主に和辻哲郎の倫理学を研究しています。今回の発表は、哲学研究をする者が大学以外でいかなる活動をすることが可能なのか、を問うものだったと思います。しばしば「象牙の塔」と揶揄される如く、学問は「一般社会」とは隔絶したところで行われるものと思われがちですが、例えば「倫理」然り「教育」然り、それは「一般社会」と切り離され得ざるものであり、その観点から観れば今回のワークショップは今後の哲学の在り方を問い直そうとするものだったといえます。
登壇者の方々を振り返ると、中島氏、石井氏は所謂「在野」の立場、佐野氏はアカデミアの「内部」の立場からの発表でした。既存の多くの研究者のルートがPhD.取得、そして大学ないし研究所での就職ということを鑑みれば、「在野」とは異端的な立場を指すといえます。しかし、「大学の研究者になること」と「何かを研究すること」には、本来本質的な連関性はありません。今回の発表でもあったように、中島氏は西田幾多郎の未公開資料の翻刻作業、石井氏は修士課程卒業からわずか2年あまりで西周の新全集出版のプロジェクトを本格稼働させており、これは大学にいれば出来るというような生易しいものではありません。また佐野氏におかれても、それまでの哲学研究から発展させて、現代における学際教育のあるべき姿を問い直そうと活動されており、それをFaculty Developmentという枠組みの中で実現する道筋について発表なさったと思います。
今後は人文科学のみならず、あらゆる分野において基礎的で、他分野の方には重要性を理解し難い研究は厳しい立場に置かれるかもしれません。本ワークショップをきっかけとして、「研究すること」をより広い視野から見直す動きにつながればと願ってやみません。私自身、修士という未熟な立場ではありますが、責任感を持って研究・活動に挑む方々の話を聞く事が出来、改めて蒙を啓かれる思いでありました。

最後に、登壇者の御三方、そして上原先生、ご来場の皆様にお礼を申し上げます。(本田隆裕)